『自分なり』
人気ラーメン店でA君がアルバイトを始めた日のこと、ランチタイムのピークが過ぎテーブルにいるお客もチラホラという状況になった時、A君は店長から皿洗いを命じられた。つい先ほどまでの戦場のような忙しさから開放され、ほっとした雰囲気で皿洗いの仕事をしていたら店長から罵声が飛んだ。

『チンタラ洗っているんじゃない。全力かつ、大急ぎでやれ!』

 休憩のとき、A君は店長に謝りながらも思っていたことを率直に話してみた。

『全力で皿洗いをして洗うものがなくなったら、新人の僕だけがヒマになるのが、いやだったから無意識に時間調整していたかもしれません。』

 すると店長からはA君にとっては意外な説明を聞いた。

『君をヒマにしないのが私の仕事だ。もし本当にヒマになれば休憩という指示をだす。君に要求したい事はただ一つ、いつも全身全霊で目の前にある仕事に集中すること。もしダラダラと仕事をしていたらそのスピードがいつのまにか君の最大限のスピードになってしまう。逆に、少しでも早くやろうとすると最大限のスピードも徐々に高められる。だから普段から全身全霊で少しでもたくさんの仕事をこなすように心掛けることが君自身のためなんだ。』

 
パーキンソンの法則というのは仕事は与えられた時間に応じて処理されがちで、時間が多くあっても少なくても与えられた時間を使い切って仕事はなされる、というものです。

 あなたの仕事の取り組みにも、そんな傾向はありませんか?

『あなたは最大限の努力をさけるために、一日何回ぐらい自分と取引しますか?
最大の潜在能力と、一日の最小条件との間で、何回ぐらい妥協したでしょうか?』


“それが人間の本性さ”というかもしれません。しかしこのいわゆる自然な道に従うことには、重大な、しかも独特な危険が潜んでいるのです。

『あなたの、“しなければならない”最小限は間もなく、あなたの“進んで行う”最大限になります。そして“必要最小限”が、あなたの選んだ最大限になる時、あなたの人生の終結は全く詰まらないものになってしまいます。私たちはそういうふうにして最小限の努力で済まそうとし、最小限の成果という減食療法をやりがちなのです。』

 潜在能力はそれを目いっぱい働かせ続けさせると次第に開発されて津波のように大きな勢いがつきますが、働かせるのを怠ると段々弱まっていきます。だから目の前にあるどんな簡単な仕事もやる時は全力で取り組むことです。

 ライオンは獲物をとる時、どんな弱い相手であっても手を抜いたりすることはありません。全力を出して襲いかかります。目の前にやるべきことが済めば別のこと、あるいは、遊んでも、休憩してもよいのです。

 かつて京セラでは不景気で工場がヒマな時、半分の社員は草刈、残りの半分の社員が全力で製造に当ったといわれます。

 またその昔、松下電器では大不況の時、製造は半分の社員に任せ、残りの半分の社員は販売に出かけ、難局を乗り越えたという事例もあります。

 潜在能力は全ての人に使い切れないほど豊に与えられていますが、通常の力を出し切らない限り引き出されません。ですから成長するためには全力を出してやることが欠かせないのです。

 長島茂雄氏は東京6大学(立教大学)でも大活躍をしました。当時スパルタ式の猛練習で鳴り響いていた砂押氏が監督です。長期にわたる合宿になると、たいがいの選手は先のことを考え全力は出さずにスタミナの温存をしておこうと考えます。ところが彼だけは別格で、最初の日からハッスル、全力を出し切って練習に取り組むのです。それが長島選手の潜在能力を大きく開発し開花させていったのではないでしょうか?

 豊かな潜在能力が与えられているのですから力を出し惜しみしてはいけません。仕事をする時は仕事と一体となってしまう事です。

『偉大さの真のしるしは仕事そのものを情熱と喜びを持って愛することであり、その仕事が自分を忘れさせ、ふと気がつくと仕事をしている自分がいる、というようなものなのです。』